それでも君と、はじめての恋を



「渉、メシ」

「……」


キッチンから出てきたモモはすでに湊ちゃんが座るテーブルに夕飯の準備をしていて、呼び掛けに応えないあたしの元へやってくる。


「……渉?」

「見惚れてただけ」


にやりと笑って立ち上がると、動きが止まったモモの横を通り過ぎてダイニングテーブルへ向かった。そこに並ぶのは3人分のチャーハンとスープ。


「うわー! さすが! 美味しそうっ」

「チャーハン好きー」

「湊ちゃんいいねぇ、お兄ちゃんが料理上手で」

「うん! 渉ちゃんはここね」


湊ちゃんに言われた通り隣へ腰掛けると、立ち昇る湯気と美味しいそうな匂いに食欲をそそられる。


「おにいちゃん食べていーい?」


こちらに背を向けたまま微動だにしなかったモモが振り向いて、「うん」と言いながら戻ってきた。


椅子に座ったモモを確認すると、あたしと湊ちゃんは両手を合わせていただきますの挨拶。


すぐさまスプーンを持ってチャーハンを口に運んだ湊ちゃんの笑顔を見ながら、あたしもスープが入ったマグを手にした。


ふわふわの卵と鮮やかな緑色のほうれん草。スープにはとろみがついていて、飲み込むと予想していた味とは違った。


「これかき玉汁だと思ってた!」

「……ダシの違い」

「おいしい!」


続いて食べたチャーハンもやっぱり美味しくて、言葉に出して伝えても反応しないモモだけど、特に突っ込むことなく食べ進める。


「それにしても湊ちゃん、いい食いっぷりだね」

「好物が米だから」

「へえ。そうなんだ」


ガツガツ食べる湊ちゃんの口元に付いていた米粒を取ってあげると大きな瞳がチラリとあたしを見て、照れ臭そうに頬を染めた。