それでも君と、はじめての恋を



「モモとお母さんって仲悪いのかなって思ってたけど、アレだね。喧嘩するほど仲が良いってやつだね」

「……考えたことない」

「話聞いてると、自慢の息子なんだろうなーって。モモ、店の手伝いもしてるんでしょ?」


グラスに飲み物を注ぐモモに問い掛けると、「あー……」と何でかあまり認めたくない感じ。素直じゃないな。


「どういうことしてるの?」

「雑用。備品の補充とか掃除。たまに電話対応」


さすがにシャンプーとか接客まではしないのか。ちょっと安心、なんて。


「偉いね、家の手伝い」

「……バイト感覚だから」

「えっ! バイト代出るの?」

「出なきゃさすがにやらない」


そうだったんだ。バイト代出るってことは、普通に生活するには大して困らないんだろうなぁ。


「やっぱりバイト代あるのとないのじゃ違う?」

「……まあ、家の手伝いなかったらバイトしてると思う」

「そう、だよねぇー……」


先月ピンチだったあたしは眉を寄せて、溜め息。

や、常に月末はピンチなんだけどさ。

毎月お母さんからお小遣いをもらってるけど、一度もお小遣いで足りると思ったことがない。


実際問題モモと付き合ってからは全く足りなくて、お母さんに一生のお願い!と何度も頼んではいい加減にしろ!と怒られてる。


「……バイトすんの?」

「え? んー……しようかなぁ、って最近考えてるんだ」


ペットボトルを冷蔵庫にしまうモモの背中を見ながら、モモが家の手伝いとか湊ちゃんの面倒をみてる時、自分は何をしてるのか思い返した。


部活もしてないから葵と純と遊んでるか、家で勉強もせずごろごろしてるか寝てるよね。


もちろん毎日モモと遊んでるわけじゃないけど、遊ぶ時にはそれなりにお金は使うし、私服で会う時はお洒落したい。


服だけじゃなくてコスメだって欲しいし、ネイルや髪の毛だって綺麗にしていたい。


モモと付き合ってることで意識してる部分もあるんだろうけど、それを抜きにしたってお小遣いの範囲で生活するにはちょっと厳しいのが現実。


……考えれば考えるほどバイトした方がいいような気がしてきた。