「……わー……」
玄関から数歩でモモの部屋に通されたあたしはまず、天井の高さに驚いた。
4メートル……や、そんなにないな。でも3メートルはあると思う。あたしの部屋よりは確実に高い。
「モモの部屋は黒と白だと思ってた」
壁紙は淡いベージュでカーテンはブラウン、カーペットと布団カバーは濃いブラウンなんて予想外。
ガラステーブルとテレビは黒だったけれど、2人掛けのソファーはミルキーな白で、赤いクッションがひとつ置かれていた。
あ、テーブルの端に小さいサボテン発見。
「片付けた?」
ドア枠に寄り掛かって傍観していたモモに振り返ると、暫しの沈黙。
「……片付けた」
やっぱり。おにぃの部屋とは別物すぎるほどに綺麗だもんな。
「何か飲む?」
「うん。何でも大丈夫」
寄り掛からせていた体を上げたモモに「あ」と声が出たのは、ちょっとお願いがあったから。
何?と目で聞いてくるモモに、頼みごと。
「……ついてってもいい?」
「……」
少し目を開いたモモはちらりと廊下の先を見遣って、「何もないよ」と言いながら鞄を部屋の隅に置いて足を進めた。
ダメと言われなかったあたしは図々しくも後を追って、3つの扉の前を通り過ぎながらリビングへお邪魔した。
おお……!
真っ直ぐ進んだ廊下の奥に存在したリビングは、美容院と同じように白と赤を基調にしてるみたい。お母さんの好みなのかな。
「渉」
「ん?」
すぐキッチンに向かっていたモモに呼ばれて、思わず笑ってしまった。対面式キッチンのカウンターにズラリと並んだ数種類の飲料水のせいだ。
「んー……グレープ。あ、やっぱりミルクティー!」
2リットルのペットボトルを指差して選ぶと、モモはミルクティーを取って用意してくれる。
……いいな、これ。
林間学校でカレーを作るモモは見たけど、キッチンに立つ彼氏って魅力増大かもしれない。
ニヤニヤとひとりで浮かれながら、そういえばとモモのお母さんと話したことを思い出した。



