それでも君と、はじめての恋を



「ごめんついでに言っちゃうけど、ホントは最初ね、騙されてるんじゃないかと思ったの」

「……」

「悪い女子高生に引っ掛かったんじゃないかって」

「え!? そそ、そんなつもりは全く……!」


先程まで火照っていた顔から一気に熱が引いて、代わりに焦りと冷や汗がやってくる。


「うん、だから安心した。って言っても疑ってたのは、ホント最初だけなんだけどね」


クスクスと笑うお母さんに言葉を返せずにいると、やっぱりモモと似てる瞳があたしを捉えた。


「あんな子だから昔からよく誤解されてね。眼つきは私譲りだろうけど、きっと共働きであまりかまってあげられなかったからかしらね。表情も感情も表に出さない子になっちゃって」

「……わ、分かり辛いなぁとは思います」

「そうねぇ。よく見てる人には分かるんだけど、みんながみんな分かるわけじゃないでしょ? 中学の時は何人か友達がいたみたいだけど、家に連れてくることはなくてね。高校もそうなのかしらって心配だったのよ」


母なりの心配、って感じかな。

ていうかごめんなさい。出逢う前はあたしも関わってはいけない人だと思ってました……。


「私にも責任はあるんだけどね。あの子、我儘言わないでしょう? 私も聞いたことないの。仕事ばかりの両親に迷惑を掛けられないとか気遣ってくれてたのか、元からひとりで大抵のことは出来ちゃう子だったのかは分からないけど」

「前に……料理をするって言ってました」

「そうそう。そうなの、私が下手だから小学3年生の時にはもうキッチン立ってたわね」


「嫌味でしょ?」とおどけて言うお母さんは、モモが大事なんだろうなと思う。


「寶は強くて賢くて、ひとりでも大丈夫だろうなんて、親の勝手な言い分ね。あの子からしたら、とんだ迷惑だろうなと思うのに文句ひとつ言わないんだから……つい甘えちゃってね」


――モモの小さい頃を聞くことはとても新鮮で、だけど全く想像できないわけではなかった。