「そういうとこ真面目っていうか、誠実っていうか。あと、不器用なだけで優しいし……えと、どっちかって言うとあたしがいつも困らせてる側で……」
困るけど、嫌いにはならないと言ってくれた。本当に嫌だったら怒るとも言ってくれた。
それはいつか喧嘩に発展してしまうのかもしれないけど、モモはいつも先走っちゃうあたしを責めることなんてなくて、自分のダメなところもちゃんと分かってる。
「思ってることは、ちゃんと言ってくれます。逆にあたしが何も言わなくても気付いて、気遣ってくれます」
ああ……あたしは何を語ってるんだ、恥ずかしい。
でも、モモが好きなんだってことを伝えたくて、伝わればいいと思わずにはいられなくて。視線を上げた先に微笑みがあればいいと願った。
――え!? あれ!?
鏡越しに見えたお母さんの表情は“信じられない”と言った感じで、不味い物でも食べたような顔色をしていた。
「どうしようマキちゃん……あの寶がべた褒めされてる……」
「それだけ渉ちゃんは寶くんが好きってことですよー。寶くんは幸せですね、こんなに想われて」
「寶にはもったいなさすぎるわ。渉ちゃんにはもっといい人が」
「――っいません!」
ハッとした後には遅くて、目を見張るお母さんと牧野さんにカーッと顔が熱くなる。
「す、すみません……」
うわぁ、もう、バカ。
いませんって、そんな言葉の途中で全力否定しなくても……いませんよーアハハハとか笑っとけばよかった。
「……」
フッと微かな笑い声が耳を掠めて、見るとお母さんが笑顔を向けていた。
「ありがとう。ごめんね、彼氏のダメ出しされたらいい気しないわよね」
「……いえ」
改めて見ると、綺麗な人だと思う。どちらかと言うと美人なんだけど、気の強そうな感じがかっこよく見えた。



