それでも君と、はじめての恋を





5月から林間学校、体育祭、高校総体と行事が続き、やっと一息ついていた生徒達のほとんどは1週間後に迫った試験に頭を抱えていた。


――多分。



「葵、見て。毛先死んでる」

「エクステじゃん。付け換え時かもね」

「根元も結構伸びてる?」

「んー。そろそろ染めた方がいいかも」


そう言われて、あたしはバタッと机に倒れ込む。


「お金がないんデス!!」

「兄貴に払ってもらえば?」

「彼女出来たらケチになった!」

「ドンマイだよ」


アイツ! この色にしろ、ロングの巻き髪にしろと長年言っておきながら! 彼女できた途端好きにしろときた!


「今月お小遣いほとんど使っちゃたし……もうダメ生きられない」

「計画的に使わないからそうなるんだよ」


顔を覆っていた両手を耳に持っていきたいほど痛い葵の言葉。


泣きたい気持ちになっていると、先程から聞こえていた純の鼻歌が止まった。


「俺も今月ちょっとピンチなんだよねぇ」

「へえ、めずらしい」


葵が驚くと、純は読んでいた雑誌を閉じてニコリと可愛い笑顔を作る。


「まあ今月はお姉さん方と遊べば問題な~し」


一瞬、仲間意識を持ったあたしがバカだった。純なんて額の生え際からハゲていけばいい……。


「あ。モモおかえりっ」


放課後の教室に戻ってきたモモは、ホームルームが終わったあと安部ちゃんに呼び出されていた。


この時期に呼び出される理由はひとつ。1年生の時同様、試験の結果に期待されてるから。


「成績上位15名をわざわざ呼び出して激励! なぁんて、教師も暇だよねぇ~」

「必死の間違いでしょ。おつかれ桃井」


待っていたあたし達3人に「お待たせ」と少し疲労感を乗せて言ったモモ、ちょっとカッコイイ。


あたしのキュンポイント幅広いな。