「ほんじゃ、鬼の居ぬ間に戻りますか~」


純が言いながら体を起こせば、モモと葵も立ち上がった。


結局、返事聞けなかったな。


そう思っているとモモが振り返って、あたしは微笑んだ。


無表情を久しぶりに見た気がして、ふたりで過ごした時間がまるで夢みたいだけど、気持ちは確かに残っていたから。


「おやすみ、モモ。また明日ね」


ユラユラと手を左右に振ると、目の前に立つモモは「うん」とだけ言った。


「……いつか、リベンジで」


ぶっきらぼうに、少し恥ずかしそうに付け足したモモは、ぐしゃぐしゃとあたしの頭を乱暴に撫でてから背中を向ける。


「リベンジってなんのことですか桃井くぅ~ん!」

「……ほんと黙って」

「あんま桃井のことからかうなってー」


そんな会話を残して、モモたち3人は部屋を出て行った。部屋に残るのはポカンとしたあたしと、両腕を組んだ葵だけ。


「いつかって……明日かもね?」


顔を合わせた途端、ニヤリと笑う葵に体温は急上昇。


「ッヤダ――!! どうしよう! もうダメ聞いて葵あのねあのね! モモったらね!?」

「ハイハイ、朝まで付き合うよ」


そう言ってくれたけど、きっと葵は呆れてしまうかもしれないと思った。


この部屋で過ごした、モモとの時間。


キスのひとつも上手にできなくて、抱き締める手つきさえぎこちない。


なんて不甲斐ないふたり。


だけど胸の内が温かいから。
触れたとこから伝わった緊張や困惑さえ愛しいから。


今もまだ、明日はもっと、隣にいたいと思うの。


だから、ねえモモ。待ってるから。


必ずいつか、リベンジして。



あんまり遅くなっちゃ、嫌だけどね。


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