それでも君と、はじめての恋を



……今、モモはどんな顔であたしを見てるんだろう。見てないかな。


……ううん。きっと、ずっと見ていてくれた。


力の入ったモモの手に、そう感じた。



だから次の瞬間引き寄せられても驚きはしなかったし、ぽすっとモモの胸に寄りかかる準備は出来ていたと思う。


「…………」


まるで駆け引きみたい。


こうして欲しい、こうなればいいのに。そしたら次は、こうするのに。


無言の空気はお互いの心内を探りあって、これでいいかな?なんて。


居場所が定まっていなかった両脚を動かして、それこそ全てを預けるようにコンパクトにした身を寄せた。


そうすればあたしはもう、モモの腕の中。


腰あたりに感じる組まれた両手は、脆くも優しい施錠のよう。



……変なの。


心臓は相変わらずドキドキとうるさいのに、落ち着く。目を瞑って、モモの体温と脈を感じていたいと思ってしまうくらいに。


だからもっと、もう少し、くっつきたくて。両腕をモモの背中に回した。



……心臓の音聞こえちゃうかも。ていうか、どっちのドキドキなのか分かんないや。



モモの鎖骨あたりにぴったりとくっ付けた右耳は、心拍数ひとつ逃さない。


トクトクと静かになってきた心音にちらりと視線だけを上に向ければ、顔を背けるモモが目に入った。


あたしを腕の中に閉じ込めているのに眉を寄せて、唇を結んで、体を強張らせて。


だけど斜め下から覗くモモの横顔はものすごく、可愛かった。


「……ふっ……」


思わず笑いが零れて、そのままクスクスと笑えばモモは正面に顔を戻して盗み見るようにあたしへ視線を落とす。


やっぱりモモ、緊張してたんだ。