「今日は女の子とデートしないの?」
ローファーを履きながら聞くと、純は踵部分を踏みつぶしたローファーを地面に落とした。
片方だけ裏返ってしまったローファーをめんどくさそうに足で引き寄せて、そのまま履く純は「ん~」と悩ましげな声を出す。
「どうかなぁ」
「どうかなぁって、何よ」
予定は入ってるけど、どうしようかなぁってこと? 純ごときに選択権があるなどと……生意気な。
純は怪訝そうに見上げていたあたしの肩に、腕を回して歩き始めた。
「渉が遊んでくれないかなぁ〜」
「まだ言ってんの、それ」
悪いけど純と2人で遊ぶのは勘弁してほしい。友達としてはいいけど、異性としては見れないっていうか、見たくない。
まあ、純が本気で言ってないのは分かってるんだけどさ。
「じゅーんー!」
昇降口を出たところで、後ろから純の名前が呼ばれた。その瞬間、あたしの肩に回されていた腕はあっさりと離れる。
……ああ、そういうこと。逆か。予定はないけど、誘われるだろうなってことね。
純のくせに生意気!



