それでも君と、はじめての恋を



「今日はいいっ!」

「渉いっつもそう言って来ないじゃん」


あたしの考えが分かってるかのように、呆れた顔して笑う葵。でも多分、ごめんねって気持ちと、ありがとうって気持ち半々だと思う。


葵、七尋くんのこと本当に好きだもんね。


「ま、今日は帰るよ! 明日はあたしと遊んでねっ」

「うん。明日は空いてるから」

「んじゃあまた明日!」


葵に手を振って教室を出ると、後ろからついてくる人影。


「俺も帰る〜」


純がしまりのない笑顔で言いながら、あたしの隣に立った。さっきまでむつけていたくせに、なんでこうすぐにヘラヘラできるのか。


「ごめん、さっき痛かった?」


なんだか申し訳なくなって謝ると、純は「別に〜?」と、どうってことないと言う風に笑う。それはそれで腹立つんだけど。


「俺が他の女の子と遊んだから怒ってるんでしょ〜?」

「違うけど」

「まったまたぁ。今日は渉と遊んであげるからっ」

「遊ばないけど」

「分ぁかったから〜、冗談じゃん。次はサボりません〜」


嘘つけよ!

ムスッとする純の横顔を見ながら心の中で突っ込んで、あたしと純は並んで下駄箱に向かう。