それでも君と、はじめての恋を



「何でフード」

「え? ああ、別に……」


モモに聞かれて被るのをやめようとフードに手を伸ばしかけた時、森くんが「そーいえば」とあたしを見る。


「巻き髪じゃないの初めて見たなー」


その言葉にハッとして、あたしの手は逆にフードを深く被る為に動いた。


「え、あれ? あ、ごめん!」

「いや違う! 髪のことじゃないから!」


眼深に被り直したフードのせいで森くんの顔は見えないけど、否定する為に手を左右に振る。――が、右隣りから感じるモモの視線に、あたしは左隣にいる葵の方へ身を寄せた。


「めんどくさいから見せちゃいなって」

「ぎゃ――!! やめて――!!」


無理やり葵にフードを取られて、両手で顔を隠して出来る限り俯く。


いやもうさっき何回も目を合わせたし! すでに見られてるけど! 何かこう改めて見せるっていうのもちょっと嫌っていうか無理デス!!


「……何?」

「渉、今メイクしてないから。桃井にスッピン見せるの恥ずかしいんだよ」

「ああ……」


それだけ?

って言いたそうなのがすっごい伝わる! もしくは、また?とか思ってそう! だってもう無言っていうか無反応決め込んじゃってるもん!


シーンと急に静まった空気に、また失敗したと思う。


あたしが平然としてれば問題なかったのに、騒いで嫌がって隠して。その度モモを困らせてるって分かってるのに、いつまで経っても直らない。


「渉」

「……ハイ」


呼ばれても振り向かないあたしの肩にモモが手を置いて、ピクリと体が跳ねる。


ああもうダメだ。
死ぬほど恥ずかしい。

騒がなきゃ良かった。普通にフード取れば良かった。スッピンでもストレートの髪でも何でも、最初から見せれば良かった。