それでも君と、はじめての恋を



「困る……?」


こう言えば正解だろうかとでも思ってるのか、少し疑問系で不安そうなモモにズドンッ!と胸に矢か何かが刺さった感覚。


困るって……! そんな、この返答じゃダメ?みたいな顔されても! ちょっともう、モモじゃないけど勘弁して……!


「じょ、冗談だから! 言葉の綾!? ただのたとえ話っ! でも嬉しいありがとう!」


自分で撒いた種だけど、まさかそんな、モモが真面目に考えて返してくるとは思わなくて一気に喋る。


冗談と聞いたモモは口を手で覆って、あさっての方を向いてしまった。


モモがしくじったんじゃなくて、あたしがしくじったんデス……!


ふたりの間に流れる気恥しい空気が、いたたまれない。


あたしのバカ。

いつも好きとか可愛いとか色々言わせようとモモに質問攻めしてるけど、改めます。恋愛初心者のくせに調子乗ってすみません。


ぐるぐる考えてる内にふたりの足は駅構内に踏み入って、視界の隅に切符売り場をとらえる。


改札口上にある時計を見上げれば、6時半を過ぎたところだった。


「……切符買おっか」


そろそろ帰る時間と言うよりは、もう帰ったほうがいいかなという気持ちの方が大きくてモモに尋ねる。


するとモモは頷いたあと、先程あたしが見上げたものと同じ時計に一瞬だけ視線を向けた。


切符売り場まで行くと繋いでいた手はどちらからともなく離れ、別々に列へ並ぶ。


待ってる間にバクバクとうるさく鳴っていた心臓は静かになり、やっと落ち着いてきた。


僅かに残る気恥しさがあたしに諭した教訓。


モモに頑張らせてはいけない。なぜならあたしが対応できないから!


どう反応すべきか葵に報告がてら相談しようと思いながら切符を買って、先に買い終わっていたモモに歩み寄る。