「こんなかっこいい奴もうちのアクセ付けてんだぜー!って宣伝したいわけよ!」
「……それって女性客を増やそう、とかですか?」
「……」
……え。あれ?
何でそんなポカンとして見てくるの!?
何かおかしなことを言ったかと焦っていると、店長は控えめに吹き出した。
「さすがにそこまでは……! いやぁ、愛されてるねー桃井くんっ」
「え!? そういうことじゃ……!」
ない、わけじゃないけど……!
本当に楽しそうに笑う店長に調子が狂う。プラス、恥ずかしくなってきた。
「いやいや、分かる分かる。桃井くんかっこいいから他の女子に見せたくないよなー」
「いや、だから……っ!」
「独り占めしたい的なね? いやぁどうですか桃井くん。彼女がやきもち妬いてますけど」
ぎゃぁあああああもうこの人ヤダ帰りたい!!
「撮らない」
サラリと答えたモモにあたしも店長も一瞬固まって、だけど店長はやっぱりまだ楽しげに話し出す。
「そうやって彼女が嫌がるからってもう絶対引き受けない気だろ。やらしーっ」
「あたし別に嫌ってわけじゃ……!」
「じゃあ撮って載せていい?」
「そ、それはモモが決めることなんで……」
あたしが口を挟むことじゃないっていうか。
素直じゃない自分の思考にも気付いていたけど、モモが引き受けないと分かってるからこそ言えた言葉も結構ズルイ。
「渉ちゃんもそう言ってることだし撮ろうよー。立ってるだけでいいんだからさ!」
「……撮らない」
頑なに拒否されてブーイングし出した店長に困り果てたのか、モモはあたしの手を引いて歩くように促した。
「じゃ」
え?
「次来た時には絶対撮ってもらうからなーっ」
え? もういいの? なんだったの?
モモはさっさと店を後にして、その背中に困惑しながらも声を掛ける。



