それでも君と、はじめての恋を



「はー……笑った」

「笑いすぎ」

「分かったって! ごめんて!」


全然分かってない彼女がひとり、ここにいるんですけど?


生理的に溜まった涙を拭いながら、店長は再びあたしに笑顔を向ける。


「いやしかし良かったなぁと思って。あの桃井くんがねーって嬉しくなっただけ。いやいや、ほんとホント」


言葉の途中で少し睨むと、店長さんはケラケラと楽しげに笑うだけ。


まあ、ほんとにバカにしてはいなかったっぽい、かな……?


「ほんで中学生の桃井くん? 今と大して変わんないけどなー。あ、髪は茶髪だったか」

「え! そうなの!?」

「あー……うん」


こまめに染め直すって言ってたし、髪いじるの好きなのかな?


茶髪のモモを想像したくてジッと見つめると、気付いたのかモモの視線はあさっての方。


「んー……あんま想像つかない」

「はは! じゃあ今度、卒業アルバムでも見せてもらえば?」

それすごくいい!!


目を輝かせると店長は笑って、「それで?」と抽象的な言葉をモモに投げ掛ける。


「今日こそ写真撮らせてくれるだろ?」

「写真?」


ギクリと肩を揺らしたモモを不思議に思ってると、店長が急にあたしに訴え始めた。


「渉ちゃんからも頼んでっ」

「は? 何をですか?」

「写真だよ写真! うちのホームページでお客さんのコーデをアップする場所があるんだけど、何回頼んでも引き受けてくれないんだよねー」

「ああ……」


なるほど、と思いつつモモは絶対引き受けないだろうなと確信する。


隣に立つモモ、すっごい嫌そう。今にも逃げそう。