「……食べてみる?」
なーんて言ってみたりネッ!
「……」
どう反応すればいいのかと困ってる風なモモに若干後悔しつつも、差し出したアップルパイを引っ込めるに引っ込められない。
「そ、そんなに熱くないよ! 多分っ」
飲み込んだはずの羞恥心がまた込み上げてきて、顔に熱が集まるのが分かった。
どうしよう恥ずかしい! ていうか要らないなら要らないって早く言ってほしい! それもそれで悲しいけど!
「えっと……」
完全にうろたえ始めたあたしが言葉を切ったのは、モモが身を乗り出したから。
サラリと揺れたピンク色の毛先が、アップルパイを持つあたしの手に刺激を与える。
う、わ……。
「――ッ!」
ビクリと揺れたモモの背中。ジワジワと上がるあたしの心拍数。
「……」
視線の先に顔を歪めたモモがいて、口角を押さえる指の近くに赤い舌先が見えて、言葉の出だしを失った。
「あ、つい……よね?」
そんなに熱くないよと言ったのは自分なのに、あたしまでどう反応すればいいか分からなくなる。
「熱い」
少し不機嫌そうに呟いたモモが、あたしの手から取り上げないままアップルパイを食べるなんて……!
何それ不意打ちすぎてもうダメ。イエローカード。
「あげる……」
弱々しい声と共に、モモの顔が見れなくてそっと顔を片手で覆った。
「何で?」
「……いっぱいなんデス」
胸が、だけどね。
それ以上モモは突っ込んでくることなくアップルパイを受け取って食べてくれる。あたしはそんなモモをちらちらと見ては、頬を染めた。



