それでも君と、はじめての恋を



1階から7階まである雑貨店のほとんどを回ったら、モモのことがたくさん知れた気がする。


バスルーム用品のコーナーで入浴剤を見ていた時、モモは長風呂ではないことを知った。


ドラッグストアでヘア用品を眺めていた時、モモは3週間に1度髪を染め直していることを知った。


家具コーナーではモモの部屋にあるものと似てるソファーを教えてくれたし、マグカップを見ていたらモモはあまり使ったことがないらしい。


本屋では雑誌をしげしげと眺めて購入までしたのに、CDショップはサラッと見るだけで終わった。


街や店は人で溢れているけど、知り合いに逢うことは滅多にない。


ふたりきりで、ふたりきりの時間。ドキドキして、ワクワクして。逸る気持ちが歩幅に、歩調に伝染するようで、どこまでも歩いていけるような気がした。



「はー……結構長くいたね」


雑貨店を出ると目の前には待ち合わせをした駅があって、遠くない距離に少し笑ってしまう。


普段行かない場所を見て回るのは、新しい発見ばかりで楽しかった。


「次どこ行く?」


言いながら足を前に出して、駅前に立地する大型店へと繋がるペデストリアンデッキを歩く。


「喉乾いた、かも」

「じゃあどっか入ろっか。お腹は? 空いた?」

「普通」


前に好き嫌いは特にないって言ってたからなー……どうしようか。


『どこ行く? どこでもいいよ、は禁止! それが1番困る!』


おにぃの言葉を思い出しながら、そう言われてもなぁ……と辺りを見渡す。


ほんとにどこでもいいし、あそこがいい!こっちの方がいい!って言い合うあたしとモモでもないわけで。


うーんと悩んで浮かんだ、記憶の中を泳ぐ助け舟。