それでも君と、はじめての恋を



「わ。見てモモ」


階を移動して、キャラクター雑貨やどこの会社が作ってるのか宴会用のお遊び道具などを扱う場所を蛇足歩行中。小さな瓶に入ったマリモの隣に、エビまで見つけてしまった。


「観賞用エビだって」


初めて見たものに足を止めて小瓶を手に取ると、モモがその中を覗く。


体長1、2センチ程度の深紅色の小さなエビが、海草の周りを散歩するように泳いでいた。


「おいしそう」

「――ッ」


ポロリと言葉が出たと同時に、形容しがたい声なのか吐息なのか分からない何かを発したモモ。


「……?」

なぜ顔をそちらに背けていらっしゃるんでしょうか。


あたしに後頭部を向けているモモは、よくよく見れば口を手で覆ってるみたいだった。


「モモ?」


不思議に思って小瓶を棚に戻し、もう一度名前を呼んでも返答はない。


どうしたのかなと思って首を傾げると、モモの肩が微細に揺れていることに気付く。


え? もしかしなくても、笑ってる……?


「何で!? え、笑っ……どこで!? 何がツボッたの!?」


ていうか顔を見せてよ! 笑い続けるモモなんて貴重すぎるのに!


繋いでいる手を無理矢理引っ張ると、モモはやっと顔を見せてくれる。無表情に戻っていたけれど。


「えー……」

「や、何でもない」


そう誤魔化しながら再び口元に手を持っていくモモの嘘くささと言ったら。


「……おいしそうって……」


フッと可笑しそうに鼻で笑ったモモにそこか、と思う。


嘘でも可愛いとか言えば良かったかな。いやでも遠目で見ればまあまあ可愛いけど……。


「近くで見たら結構リアルだったんだもん」


口を尖らせて言うとモモは「だね」と同意の言葉を漏らして、あたしはモモの手を引いて歩き出した。