一応、今日誘った理由が『林間学校で必要なものを一緒に買いに行きたい』というものだったわけだけど、1時間も掛からずに終わってしまった。
無事に欲しい物を購入して、商品を眺めてあたしを待つモモに近付く。
特に欲しい物はないって言ってたけど、まさかこのまま初デート終了なんてことになったらどうしよう……!
「お待たせ」
声を掛けるとモモは振り向いて、あたしの手に袋が持たれていることを確認した。
「あとは?」
「……ううん、もう何もない」
軽く左右に首を振るとモモは考えるように視線を宙に向けて、再びあたしと目を合わせる。
「ぶらぶらする?」
「……」
ぶらぶら……?
「――っする!」
ズイッと前に身を乗り出したあたしにモモは驚きから仰け反って、切れ長の瞳を困惑の色に染めた。
「ぶらぶらする! モモがいるならどこでもいい! モモが行きたいとこあるなら一緒に行く!」
言いきってから、あたしはほぼ独白のように「やったぁ」と呟く。
帰る?って言われなくて嬉しい。まだ続くのが嬉しい。明確な計画がなくて適当にぶらぶらするだけでも、嬉しい。
ひとり惜しげもなくニコニコしていると、ふと感じた視線。見上げれば、戸惑っていたはずのモモが柔く微笑んでいた。
み、見られた? ひとりでニヤケていたあたしを……。でも、モモが笑ってるから、いいかな。
「……」
おずおずと手を差し出すとモモは気付いて、少しためらってから握り返してくれた。
「……へへ」
そんな言葉通り締まりのない顔を向ければ、モモはあたしの手を引っ張って一歩進み出す。
流れるように前へと視線を移したモモの横顔を盗み見ながら、同じ歩調で歩いた。
ああもう、ほんとに。幸せすぎて胸の奥が、ピンク色。



