それでも君と、はじめての恋を





「渉」


日用品雑貨を取り扱う階でウロウロしていたあたしは、声のした方に顔を向ける。


3メートルほど離れていたモモが顔の位置まで持ち上げていた物は、探していたものだった。


「それ! 良かったー!」


モモのいる場所まで歩み寄ると、目的の詰め替え用ミニボトルが数点並んでいる。


2泊3日の林間学校に化粧水や乳液をそのまま持って行ったら邪魔だから、絶対に欲しいものだった。


「大きめなやつもあるんだね。シャンプーとかも詰め替えて持ってこうかなぁ」


旅館の個室風呂や浴場には備え付けられてるみたいだけど、肌に合わなかったら嫌だし……。


「これで足りるんじゃない」


そう言ってモモが指差したのは3~4日用とポップが貼られているものだった。


「渉、髪長いから」


2泊3日だよ?と言うより先にモモが口にした言葉は、微かにあたしの頬に熱を集める。


「じゃあ、それにしようかな……」


モジモジするなよあたし!


2本と3本ずつ入った大きさの違うボトルを2種類手に持ち、辺りを見回してすぐ目に入ったタオルコーナーの表示を指差す。


「タオルも見てみる。モモは何か欲しいもある?」

「特に」

「タオルは?」

「家にある」


ですよね。男の子だもの、わざわざ新しいの買う必要ないもんね。ああでも葵も買わないタイプだったな。っていうかあたしも、そこまで買う物があるわけじゃない。


家を出る前に林間学校のしおりを見返したけど、持って行くべきものは本当に大して買い足す必要のないものばっかりだった。


筆記用具、腕時計、ジャージ、換えのTシャツ、下着、寝具、タオル、絆創膏、頭痛持ちやバス酔いする者は薬を各自持参するようにとか何とか。


これじゃあモモを付き合わせてるみたいで、なんか悪い気がする……。