それでも君と、はじめての恋を





「――モモッ!」


午後1時27分。待ち合わせ場所へ先に到着していたのは、モモだった。


数本ある路線全てに繋がる大きな駅を中心に、オフィスビルや雑貨店など色々な店が広範囲に立ち並ぶ。


友達と遊ぶ時もデートする時も、大体この駅から始まるのが住民の定番。モモとあたしも例外なく、県で1番大きな駅で待ち合わせていた。


「ごめん! 待った?」


おぉぉぉおおお何か今漫画とかでよく見るセリフがサラッと口から出た! レベルアップした気分!


「さっき来た」

「あ、ほんと? なら良かったー……」


前髪を横に流しながら、ジッとモモの姿を眺める。というより、目を奪われてしまって。


「……」

「……」

「……渉?」

「え、あ、うん!」


一度顔を上げてモモと目を合わせても、目線は再びモモの格好を隅々まで見るために動き始めた。


黒いレースアップショートブーツにサルエルパンツ。白いストライプが入った黒寄りの青にも深緑にも見えるテーラードジャケットの中は、濃いボールドのカットシャツ。


薄いグレーと濃いグレーが2つ重なったスヌードは、素材もニットとコットンに分かれていた。


そして何より、ダテ眼鏡だろうけど黒縁の大きめウェリントンが意外に似合う。


……モモって顔小さいんだな。ていうか私服がめちゃくちゃ好みなんですけど! 何これ奇跡!


「か、かっこいいね。私服……」


観察されてることに気付いていたのか、あさっての方を向いていたモモがあたしに視線を移した。


眉間にシワを寄せてるのは怒ってるわけじゃなく、どう反応すればいいのか分からないんだと思う。