それでも君と、はじめての恋を



「ふたりの旅行と新歓旅行どっちが大事なわけ!」


いつの間にか身を乗り出して怒るあたしに、葵は目を伏せた。


「サークル入った方が助かるんだって。過去問とか、教授が出す試験問題の癖とか攻略法とか? 先輩から聞けるとか何とか」


あたしにはよく分からないけど。

そう小声で付け足した葵は嘲笑するように口を歪ませて、お弁当には箸をつけないまま。


……あたしにだって分かんない。

あたしの中でサークルっていうのはどれも結局飲み会サークルみたいなもので。


おにぃが今年から大学生だけど、七尋くんと違って三流大だし……でも、先輩と繋がりがあったほうが何かと助かるっていうのは知ってる。


参加必須の新歓旅行なら、仕方ないって思う。頭ではあたしも分かってる。

だけど何もこの時期に入らなくたって、もう少し先でも良かったんじゃないかって。


何か理由を付けて不参加には出来ないのかって、考えてしまう。


仕方ないなんてそんなことは分かってるし、怒ったってしょうがないかもしれないけど、怒らないとやってられない。だって寂しいんだから。


寂しいけど素直に言えなくて、怒ることでしか寂しさを紛らせられないんだから。


「葵は大人になろうとしすぎ!」


どうせ旅行ダメになったって言われて、そっか分かったってしか言わなかったんでしょう?


「毎回聞きわけがいい子になってどうすんの! それで楽しい? どんだけ背伸びしても葵は女子高生なの年下なの無理して合わせる必要ないのっ!」


一気に喋るあたしに葵は目を丸くさせて、隣からも視線を感じたけどそんなの関係ない。