「軋む」
キシム? ああ、体が軋む……軋む? 締め付けられるじゃなくて?
「どのへんが? 体全部? 胸が?」
何でそんなことを訊くんだと言いたげなのは気付いていたけど、質問の羅列にモモはまた少し考えて首をひねる。
「首? 鎖骨っていうか肩にかけて……このへん」
説明のしようがないのか、面倒くさがったのか。スッと伸びてきたモモの手が、ためらいもなくあたしの首に触れた。
予想以上に冷たかったモモの指に、自分でも気付くか気付かない程度に体が強張る。
「こっから、ここらへんまで」
モモの指があたしの首の横から肩にかけてのラインをなぞって、離れた。
だけど何の言葉も出なくて、モモを見つめて体も固まったままで、代わりに顔が赤くなる。
「……」
「……」
う、うわぁ……どうしよう。どうしようもないほど手遅れだけど……。
触られた。モモに肌なぞられた。顔めっちゃ熱い。
何この空気!
「そ、そっか!」
ああ……モモが頷くだけになっちゃった。いきなり赤くなってごめんなさい。モモまで恥ずかしそうだもの。目まで合わなくなったもの。
空気がこそばゆい!! 誰のせいってあたしのせいだけど!
「……帰る?」
小さく頷くとモモは立ち上がって、あたしは持っていた折り紙を手帳に挟んでカバンの中へしまった。



