それでも君と、はじめての恋を



折り紙が手紙だったなんて知らなかった。

プレゼントまで用意していたなんて知らなかった。

記念日だと分かっていたなんて思わなかった。


だから一緒に帰れなかったことも、悩んでいてくれたことも、渡すのを躊躇っていたこともあたしは気付けない。そんな素振りすら見せてくれないんだもん。


だけどそんなの前から知ってた。それがモモなんだって。

無口で無愛想だけど、気付くのが遅くれるくらい自然な優しさを見せてくれる。


目を見て話すのが苦手で、不器用で、それでも顔を見れば何となく考えてることが分かる。


付き合ってたかが2ヵ月だけど、それくらいは知ってる。あたしはそんなことしか知らないとも言うけど、だからこそ、そばにいたい。


もっとモモのことが知りたい。できるだけ近くにいたい。次の行動が予測できるほどに。新しい発見にときめくほどに。


ねえ、モモ。


「……渉?」


息も出来ないほどに胸が締め付けられる感覚、モモは知ってる?



「痛い」

「……」

「モモのせいで胸が痛い」


黙ってしまったあたしに声を掛けたモモは、今日何度目かわからない困惑の表情を見せる。


「胸が、ギュンってなるの。キュンじゃなくて。胸キュンじゃ足りないの。分かる? この気持ち」

「や、……ギュン?」

「男の子って胸キュンしないの?」


数秒あたしの顔を見てから、意味もなくグランドに視線を移したモモは考えてるようだった。


以前、純にも聞いたことがあるけど純は背中に違和感を感じるとか何とか言っていた気がする。