「……」
ジッと折り紙のネコを見つめるあたしの視界の隅で、モモがローファーを履いたのが分かる。自分のローファーを地面に置いて履きながらも、ネコから目を逸らせない。
歩き出したモモの背中を一度見てから再び猫に視線を移すけど、やっぱり気のせいじゃなかった。
何か……太ってる? や、間違った。違う。何か、膨らんでる。
足を前に進めながら、モモに置かれてから触っていなかったネコの顔を押してみる。
「――……」
何か入ってる!!
勢い良く裏返してみても特別変わった様子はないけれど、折って作られただけのネコは簡単に正方形の紙に戻るはず。
え!? 何!? 妹さんから、何!? これ崩しちゃって大丈夫!?
モモの背中と折り紙を交互に見ながらも、あたしの指はすでに猫からただの紙にしようと動いていた。
カサカサと破かないように慎重に開いたからか足は止まって、目に入ったものに指も止まってしまう。
多分5秒ほど固まった後、昇降口の真ん前でドサッと地面にカバンを落としてしゃがみ込んだ。
カバンの中から手帳を取り出して、その中にしまっておいたウサギとクマも開いてみる。本当は破く勢いだったけど、それじゃダメだからなるべく早く慎重に開いた。
指が震える。胸がドキドキとうるさい。
「……やっぱり」
3つの紙はただ折り紙で作られた動物じゃなくて、幼い文字で書かれた手紙。
――こんなのは、卑怯だ。



