それでも君と、はじめての恋を



「モモ」


後頭部から手が離れたことで名前を呼ぶと、まだ気恥ずかしいのかモモは眉間にシワを寄せたまま顔を見せる。


「今日、一緒に帰りたい」


何でいつも、ちょっと目を見開くんだろ。そんなに驚くようなことを言ってるつもりはないのに。


「一緒に帰れる?」


記念日だからとはさすがに言えなかったんだけど、今のあたしは一緒に帰れるだけで満足してしまいそう。


昇降口から下駄箱に着いたところで会話は一時途切れて、ローファーを脱いだモモはそれを取り上げる際に返事をした。


「うん」


あたしも脱いだローファーを持ち上げて、上靴に履き替えるモモの横顔に振り返る。


「ほんとに!?」


確かに「うん」と聞こえたのに嬉しすぎて詰め寄ってしまったあたしに、モモは仰け反ってから頷いた。


「嘘とか冗談だったら怒るよ」

「……嘘ついてどうすんの」


いやまあ、そうですけど……そんな冷静に言われると待ちに待ってたあたしがバカっぽいじゃんか。


どうせ、たかが4日も我慢できませんでしたよ。モモ欠乏症とか葵に言ってたからね。


ムッとした表情で上靴に履き替えると、待ってくれていたモモが謎だとでも言うように頭を横に傾けていた。