それでも君と、はじめての恋を



「何で?」


踏み止まったヘタレな自分を褒めていると、当たり前にモモは不思議がって尋ねてきた。


「ううん。こっちの話。どうするのかなって気になっただけ」


あっぶない……。ホントに危なかった。寿命縮まった。もし抱き付く時は声を掛けてあたしだと判断して貰ってから抱きつこう。


「渉にはしないけど」


うん、ぜひそうして……って。


「……え!?」


バッと勢い良く顔を上げるとモモはわずかに肩を揺らして、丸くした目であたしを見下ろす。


今何て言った? あたしにはしないって言ったよね! あたしに抱き付かれた場合の話だよね!? あたしに抱き付かれた場合なんて考えるの? モモが!?


「モモッ! 今のってどういう……っ!?」


急に大きな手で後頭部を掴まれて、前に押される理由を教えてください神様。

首がちょっと痛かったんですけど……?


モモの手によって頭を下げさせられたまま、チラリと右隣を見上げる。モモまで右を見ているから顔は見えないけど、口を押さえてるのは分かった。


しくじったと思ってる時の、モモの癖。


「――……」


ジワリジワリと胸が熱くなるのは、シュワシュワと浮かんでは弾ける炭酸水の泡に似てる。甘すぎず、刺激も強すぎず。ただ味わうだけの、恋心。