「あ、渉だー……」
上靴からローファーに履き換えて生徒玄関を出ると、男女まぎれて話しこんでいた友達と出くわす。
「おー! バイバイッ」
「じゃ、じゃあなー……!」
声は掛けてきたものの、友達数名の視線は確実にあたしではなくモモに注がれていた。
本当にあの桃井寶と付き合ってるのかと言いたげなそれは、モモが相変わらずの無表情を崩さないからだと思う。
他の人は気付かないんだろうなぁ……。
あたしを見下ろす瞳は、優しいってこと。
扱いはヒドイけどね。
学校から駅まで向かうと、電車は混んでいなかった。どっちかというと、学校終わりは空いてることの方が多い。
あたしとモモはちょうど来た電車に乗って、座ることが出来た。
「あ。ねぇモモ。さっきの、何?」
聞くと、モモは腕を組んだままあたしを見る。答えが返ってくると思ったのに、待てども待てども返ってこない。
「さっき! 森くんが言い掛けたじゃん。あたしのことがどうとか」
「や……いいよ」
良くないんですけども! 気になるじゃんか!



