*
「じゃあね~ん!」
一際大きい声を出して、予鈴が鳴って7組を出たモモに手を振る純。あたしは口を閉じたまま笑って、控えめに手を振る。
そんなあたしを冷ややかな瞳で見つめてくる葵に、冷や汗ダラダラ。
「近いです、葵姉さん……」
「あんた、バカ?」
グサッと弓矢が胸に突き刺さったみたいに、あたしは「うっ」と情けない声を出す。
昼食中、ろくにモモと話せなかった。
ていうか……。
「モモが無口なだけじゃん!」
「は? 何ソレ言い訳?」
うぅっ……! だってさ、だって!
色んな言葉を頭に浮かべてみたけれど、葵の指摘通り言い訳にしか思えず、ダランと首を前に倒した。
「何のチョコが好きか聞きたかったのに……」
今日のモモから聞いた言葉、「ん」のみって……。
あたしは一体何をしてるの! 今日一緒に帰ろうとか誘いたかったのに!



