「ああ、もう……」


期待せずにはいられないあたしは、やっぱり恋愛初心者だ。


教室に向けていた足を再び1組の方へ向け、方向転換。


ドキドキする。顔が熱い。


なんであたしは、こうも単純なんだろう。モモは恋愛に興味ないって、分かってるのに。


それでも、それでも。


どうしても君に、近付きたいよ。



「モモッ!」


後ろのドアを開けると同時に呼ぶと、席に着いていたモモが肩を跳ねさせたのが分かった。


1組全生徒の視線をいっぺんに浴びて、でも、あたしに振り返ったモモから目を離さなかった。



「次、矢吹って呼んだら怒るからね!」


普段めちゃくちゃ目つきの悪いモモの瞳が、いつか見た時と同じように目一杯見開かれて、あたしは勢い良くドアを閉める。


そのまま7組まで猛ダッシュして、「廊下は走るな」なんて先生の注意も無視して、教室に入るなりガタガタと音を立てて自分の席に座った。