「は~面白かったぁ~!」
「放課後までむつけてんじゃん、あの様子だと」
予鈴が鳴ってさっさと7組へ戻る葵と純の背中を、これでもかとばかりに睨む。
あたしは行き場のない羞恥にまだ頬を膨らませて、眉を寄せていた。
「矢吹。……携帯忘れてる」
教室のドアが閉まる音と、モモの声。振り向くと、モモがあたしの携帯を差し出して立っていた。
黙って受け取ったのは、何か言わなきゃと思っても言葉が出なかったから。
「……ほんとにホントに忘れてね」
俯いたまま結局最後までそう言うと、モモからの返事は特にない。
恐る恐る顔を上げると「や、だから……」と、口ごもるモモと目が合った。
「……黒」
「……」
目を見開くと、モモは腕を組んで俯いてしまった。
……く、黒?
黒って言った? 何が? 何が黒……。
「ぎゃぁああああ! バカぁあああ!!」
組んでいた片方の腕を解いて、前髪をいじるモモにあたしは真っ赤になる。
見たんじゃん! 黒って! 見えてたんじゃん! 黒って! ちょっと待ってよ!



