それでも君と、はじめての恋を



「やきそばパンとー、メロンパンとー、チョコクロワッサンとー、しゃけと昆布と牛カルビとー……あと苺のヨーグルト」


校舎から体育館へと続く、外廊下の途中にある売店。


その横には暖房が利いているであろう食堂が、生徒の熱気で更にガラス戸を曇らせていた。


1月末となれば、温かい食べ物を求めて食堂を利用する生徒が多くなる。


それと相反して手軽な物を売る売店には、あたしだけが立ち寄っていた。


「持てるの?」


40代に見えるけど、洒落ている売店のおばちゃんがお釣りを差し出しながら言う。


カウンターに並ぶ純の千円札で買った食糧にあたしは笑った。


「へーき。教室すぐそこだし」


お釣りをカーディガンのポケットに突っ込んで、落とさないようにパンやおにぎりを腕に乗せていく。


「気をつけてね」と言うおばちゃんに返事をしてから、食堂の中を軽く覗いてみた。


ガラス戸が曇っているせいで中はよく見えなかったけれど、食堂にモモはいないと思う。


……そういえば、モモってお昼どうしてるんだろう。


ひとりで食べてそうだけど……まさか教室で?