助けてくれたじゃん、とは言わない。
あたしも葵も純の軽さは嫌いだけど、そういう部分を知ってるから一緒にいられるのかもしれない。
きっとあたしと葵以外は知らないだろうな。純は、チャラいだけじゃないんだってこと。
「あ。渉、渉っ! グロス何使ってんのぉ?」
ウザいのはいつも変わらないんだけどね!
「先生ー! 池田くんが話し掛けてきて迷惑なんですけどー!」
「池田ぁ、矢吹に構ってないで教科書開けよー」
「えー。だって渉が使ってるグロス知りた……イッタァ!」
「うっさいバカ!」
「教科書投げることないじゃんかぁ!」
笑うクラスメイトに、呆れて笑う葵。涙目の純に鼻で笑って、「授業始めるぞー」という先生の声に教室は勉強の時間一色になる。
あたしは机の下で携帯を開いて、メールを打った。送信相手はもちろん、モモ。
『どっちでもいいって、どういう意味?』
グロスを塗っていようが塗ってなかろうが、どうでもいいって意味ならさすがにへこむけど……気になる。
「……ないない」
ふと頭に浮かんだ超プラス思考の考えを、こっそりと否定した。
どっちでも可愛い、って意味。
言われたらめちゃくちゃ嬉しいけど、そんなことモモは言うキャラじゃない。
だからやっぱり、どうでもいいって意味だと思うんだよなぁ……。



