「ちょっとちょっと~、桃井より俺の方がかっこいいでしょ?」
あたしを囲う影が崩れたのは、クラスメイトの後ろに座っていた純のおかげだった。
純は振り向いた女子達に、ニコッとした可愛らしい笑顔を向ける。
「桃井より、俺に興味持ってほしいなぁ~」
「や、だぁ~! 何言ってんの純!」
「純みたいに軽い男は嫌だって!」
完全にモモから純の話題に変わり、あたしはホッと胸を撫で下ろす。同時に本鈴が鳴って、先生が教室に入ってきた。
純の「遊んで欲しかったらいつでも連絡してねっ」という言葉を聞いて、女子たちは「バーカ」と言いながらも頬を緩めて席へ戻っていく。
「本音はどうだか」
ボソリと呟いた葵はすっかり呆れている様子だったけれど、純はヘラヘラと笑っていた。
「まぁ、分からなくないけどねぇ~。顔はいいのに悪い噂ばっかの一匹狼が、そうじゃなくなったらさぁ」
自分も近付けるかもって、思うよなぁ……。
「……ありがとね、純」
「ん~? 何がぁ?」
そう言う純に後ろの葵が鼻で笑って、あたしも小さく笑った。



