「まあ、気付いてもらえて良かったじゃん」
「そうだよ渉ぅ~。恥ずかしがることないじゃぁん?」
消えたい消えたい! 神様助けて!
あたしの願いが届いたかのように、校舎の隅から隅まで予鈴が響き渡る。
助かったと思うと同時に、モモは少しだけ宙を見上げてからズボンのポケットに手を突っ込んだ。
「……じゃあ」
「お~うっ!」
「じゃーね」
純が鼻歌を歌いながら窓から離れて、葵が廊下から教室に戻ってくる。
「……」
椅子に座ったままのあたしを見つめながら、モモは開いている窓に手を掛けた。
「……どっちでも、いいと思うけど」
「……え?」
「や……じゃあね」
静かにドアが閉まって、あたしとモモの間に透明なガラスの壁ができる。
……どっちでもいいって、グロス塗っても塗らなくてもいいってこと?
どうでもいいってこと!?
「モ……」
「ちょっと渉―――!!」
「!?」
窓を開けようとして立ち上がったあたしの背後から、雪崩のようにクラスメイトが押し寄せてきた。



