「ん~。いいね。俺、メイクする子大好き。しない子も好きだけどぉ~」
「うるさいチャラ男」
マスカラ液をダマにならないように気を付けて、上と下まつげに均等に塗り重ねた。
長く、太く、濃く。変わっていく目元が、好き。
マスカラが乾くのを待つ間、付けまつげに接着剤を塗っていると「あ」と純の声。
顔を上げれば、純が見ているのはあたしじゃなかった。
「? ……うわっ!!」
不思議に思って振り向くと、窓の外にモモが立っていた。廊下から窓を通してあたしを見下ろすモモの手には、コーラと紙パックのレモンティー。
……なな、な、何で1組のモモが7組の前に!
「桃井じゃ~んっ! 何なに、どしたのぉ~?」
「ちょ、純っ!」
あたしの机に手をついて、ガラッと窓を開ける純を心底殴りたい。腕力さえあればボッコボコにしたい。
「……はよ。何か、優木に頼まれて」
あたしは鏡で顔を隠しながらできる限り椅子の左側に寄って、右側に立つモモから離れる。
こんな中途半端な顔、絶対見られたくない!!



