「ないっ! 俺達のクルーザー。誰がロープ解いたんだよ!」


 双子のケンとマサが怒鳴り散らした。

 そして俺の顔を見て、


「タイ米! お前がクルーザーのロープ解いたんじゃないのか?!」


 思いっきり疑われたが、俺は本当に知らない。俺以外にも殺人犯がいて、唯一の交通手段であるクルーザーのロープを解くなんて、いかれてやがる。とにかく否定しよう。本当に俺じゃないんだから。


「俺じゃないよ。帰れなくなるじゃないか」


「そうよタイ米はこんな事しないわよ」


 ひとみがかばってくれたおかげで、誰も俺を追及しなかった。


「とにかく戻ろう!」


 松島悟の一言で一同は別荘に再び帰ってきた。

 そして全員が食堂の席に着くと、双子のケンとマサが沈黙を破った。


「マジタニが言ってたけど、外部からの不審者なんていなかったじゃないか。田中と可奈子を殺した犯人は、この中に居るんじゃないか?」


「そんなの嫌よ。考えたくない」


 ひとみが泣き出すと、松島悟は黙ってひとみの肩を寄せた。


「なぁ、犯人が誰かは別として、彩は本当に自殺なのか?」


 マジタニの一言で全員が固まった。

 俺はギクっとしたが、バレるわけがない。密室だったんだ、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせていた。