「い・・え?」 「あ、やべ。そろそろ補導されちまうぞ。」 俺の手をひっつかむなり男は駆け出す。 空きっ腹の俺には相当堪えるし、この男を信用していいのかもわからない。 「・・・心配すんな!」 「え?」 「俺も捨て子だから気持ちわかるんだよ!」 「アンタも?」 「あぁ!」 なんて笑う男。 辛い過去のはずなのに、憎い過去のはずなのに男は笑う。 なんとなく。 なんとなくだけど。 信じてみよう。 明るい男の笑顔と裏腹に黒いスーツが暗く光を吸い込んでいた。