「もしかして・・これ?」
「そ!最後はやっぱりこれだろ!」
満面の笑みで恭汰が指さすのは、観覧車。
「乗ったことくらいあるだろ。」
「ないよ。」
「ない!?嘘だろ!」
「嘘なんてつかないよ。乗ったこと無いもん。」
「へぇ~。なんで?」
「遊園地なんて来たことなかったから。」
「嘘だろ」という顔で恭汰は私を見る。
そうだよね。
今時そんな人はおかしいよね。
だけど、本当に行ったことないんだからしょうがないじゃない。
お父さんもお母さんも「そんなところに行くくらいなら勉強しなさい」っていうんだよ。
そりゃぁ、小さい頃とかは行ったことあったかもしれないけどさ。
物心ついたころから出かけることは少なくなっていった。
そのせいで、友達からは敬遠されてさ。
きっと恭汰もそうするんだろう。
「なぁんだ!それなら早く言ってくれよ!」
「・・へ?」
予想していなかった恭汰の一言。
思わず目を丸くする私。
「お前、そういう事は早く言え。俺ばっかり楽しんでたろ。」
思いがけない恭汰の優しい言葉。
ずっと恭汰はアホな俺様かと思ってた。
だから嬉しくなった。


