帰郷してから…俺に会うたび、夏海の瞳は震えていた。

何かを堪えるように。



…さっきだって、家を出ていく小さな背中は震えていた。

―――ずっとずっと、泣いていたのに。




「…だから、悪い。皆は先に寝てろ。何時になるか分からないから、って、そう言っといて」

「……分かった」



麻美はすごくいい女だ。
俺にはもったいないぐらい。

少し困った顔を、それでも気遣うような笑みを見せてくれた。



「気を付けてね」




ドアを開けて、外に出る。

同時に俺は最低だな、と自嘲した。