夏海ちゃん遅いね、と麻美が言った。


時計を見上げるともう22時を過ぎている。



「…知らねぇよ。そのうち帰ってくるだろ」


飛び出していって最初のうちは、そう流していた。

どうせ俺が行ったとしても拒まれるだけだ。
そう思ったから。


でもさすがに三時間を過ぎるとそうも言ってられなくなった。



「…」

「…」



夏海の座っていた椅子ばかりに目を遣ってしまう。

イライラと、指を弾いた。

「……ったく」

「…あ、碧…?」



…何やってんだ、アイツ!


そう思った時には、無意識に体が動いていた。

咄嗟にケータイだけを引っ掴んで、玄関に向かった。



母さんと香奈は何も言わずに見送ったけど
麻美は玄関まで追い掛けてきた。