「なんか話してよ、孝司」
「話してよって言われても困るな、何話せば良い?」

困ったように振り向く孝司に、「何でも良いんだけど」と答えてから。

「じゃあ、昼の話の続きを。」


孝司は俺のベッドに横たわった。占領する気だろうか。

「好きだけど結ばれない、だったらいっそ死ねば良い。俺は、そう思ったんだけど」
「極論だなお前。でも分からなくはないかもしれない。生きてる方が辛くなるんじゃないかって思わないこともないよ」
クリップで留めた前髪を弄びながら、孝司は電灯の光に目を細めた。

「元々は『情死』ってのはさ、自分がどれ程相手を想っているか証明するための、最高の証拠として命を捧げるってことだったんだよ。最初は、『心中』ってのは、爪や指を剥がして捧げてみたり、髪を切って証拠にしてみたり、刺青を入れたり。指切りってのも、遊女が男との誓約の証に小指を切ることだったわけ」
「随分重たい愛だな」
「嫌いか?」
「いや」

答えると、へぇ、と孝司は笑った。