「先にお洋服と靴を買いに行きましょう」


と言う“お母さん”の要望で靴を買いに行くことになった。


「わぁ、私新しい物だなんて、初めてです!!」


新しい自分の服と靴――――
考えるだけで嬉しい。


「沙夜ちゃんは贅沢なんて知らないでしょう?これからはうんと甘えてくれていいからね」

「はい」

「沙夜、敬語は無しだ。僕らは親子なんだからね。僕達の事は『パパ』『ママ』と呼びなさい」


“お父さん”が運転をしながらそう言うけれど、『パパ』『ママ』はちょっと恥ずかしいよ・・・。


「お父さん、お母さんでは駄目?」

「うーん・・・まぁ良いか」


お父さんは渋っていたけれど、最終的には折れてくれた。


(幸せだなぁ)


窓から見える景色を眺めた。何時もと違って街並みが輝いて見える。こんなに幸せになったのは初めてだ。


「沙夜ちゃん、着いたわよ」


お母さんがドアを開けてくれた。


「はーい!!ありがとう」


着いた所は、有名なブランド店。ルリがお気に入りだった、お店だ。


お父さんとお母さんがそのお店に入るから、私も後に続いた。


「どれが良いかしら・・・」

「沙夜は桃色が似合うだろう?」


お母さんが私の為に服を選んでくれる。私は入る前に見つけたマネキンが着付けている服が気に入っていた。


桃色のパーカーに白色の半袖Tシャツ、短パンで足には銀色のサンダル。一目見て、気に入ったのだ。


「お母さん、あれが良い」


思い切って、お母さんに言ってみたらお母さんは笑ってお金を支払ってくれた。


お店で着てみると、自分が見違えたように見えた。


「わぁ!!」

「凄く似合うわ。一式買います」

「沙夜らしくて良いと思うよ」


お父さんもお母さんも褒めてくれた事が凄く嬉しかった。


服にも靴にも未練は無かったので、処分してもらう事になった。


「徐々に買いに行きましょうか」


お母さんは私との買い物が楽しみになったようだ。私もそんな経験なんて無いから、凄く楽しみだ。