私が心地良さに身を委ねていたら、おばさんはキッチンからサラダを持ってきてくれた。


私の姿を見るとさっきまでニコニコしていた顔を一層嬉しそうにした。

「まぁ、沙夜ちゃん良かったわね。」

「はい!」

(父さんみたい・・・・・・。)

私には家族との記憶なんかないし、顔だって覚えて居ないのだからそんな風に感じるのは、可笑しいことだ。


でもきっと家族が居たらこんな感じなのだろう。

(ルリはこんなに優しい両親の子として産まれて羨ましい。)

皆で食べる食事も美味しく家族との団らんというものを、経験する事が出来た。


初めて家族というものが欲しく感じた。




ルリのお葬式はスムーズに進んだ。

クラスメートも郁人も滅多に泣かないあの優まで泣いた。


ルリが本当に居ないのだということを実感した。

「・・・・・・・・・・・・沙夜。」

「ッ大丈夫。」

優が声をかけてくれたけれど、本当は全然大丈夫では無い。酷く辛くて悲しかった。


郁人と優はずっと私の傍に居てくれて慰めてくれた。背中を撫でてくれて、声をかけてくれていた。

「ルリは私の1番の親友で、何でも話せたのに・・・」

「瑠璃と沙夜、すげぇ仲良かったもんな。」

「まるで兄弟みたいだった。」

私がポツリと話すと、2人は同意してくれた。郁人が羨ましそうにこちらを見て、優が感情を抑えて自分の気持ちを言った。

「うん・・・。」

空は澄み渡っていた。


ルリはこの大空の中旅立って行く。

(元気でね。ルリ。会えて良かったよ。)

私達は会場に戻ろうと、体を後ろに向けた。


何気なく後ろを振り返った私は空に先程まで無かったものを見つけた。

「あ、虹!」

ルリの大好きな虹がかかっている。私は指を指して見つめていた。

「おっ!!」

「二重に見えないか?」

そう。優の言う通りただの虹では無かった。二重に見えるのだ。


奇跡だった。何度目を擦ってもその二重の虹は消えなかった。