日本には約61億人の人が住んでいる。


ルリに出会う事が出来たのは、61億分の1の確率だった。



私はこの小さな奇跡に感謝している。




貴方に知ってほしい事がある。




貴方に伝えたい事がある。



大切な人との出会いは、本当に確率の低い奇跡なのだと言うことを。



奇跡の出会いで貴方が産まれた事を。



人と人との出会いが自分を大きく変えるのだと言うことを。



だから今の友達を、恋人を、かけがえのない大切な人を、失わないように大切にしてほしい。



失ってしまったら、それで何もかもお仕舞いなのだから。



だから、命を無駄にしないで欲しい。



今を精一杯生きる人が居るから。精一杯今を頑張って生きれば


きっと幸せというゴールが見える筈だから。




屋上で風に吹かれながら、私はそう思った。


「今日は良い天気だね」

「あぁ」


郁人が私の隣にやって来た。


「人ってすごく暖かいんだね」

「あぁ。瑠璃の手温かかったな」

「この温もりは、消えてしまうだろうけど、私は忘れないわ」

「俺も。忘れないな」


穏やかな風が私達を包む。


『フフフッ!!ありがとう。ありがとう』


風から、ルリの笑い声と感謝の気持ちが聞こえてきた。


「ッ!!ルリ!?」

「沙夜もか?」

「郁人も?」


思わず叫ぶと郁人も聞いてきた。頷く郁人にルリの声が聞こえたという事が分かる。


「奇跡か?」

「うん。きっと。ルリは奇跡を起こす達人だもん」

「確かにな」


私達は互いに顔を見て微笑み合った。


「帰ろう。浜田先生が待ってる」


屋上を去る。屋上の扉が閉まる音が響いた。


沙夜と郁人が屋上から姿を消すと、強い風が吹き、季節外れの桜の花びらが舞っていたらしい。


「あら桜?・・・変ねぇ」


屋上で洗濯物を干していた看護師さんが不思議そうに首を傾げていた。