ガラリと扉を開けると、何時もと雰囲気が違うルリの病室があった。


「ルリッ!!」

「ルリッ!!」

「沙夜ちゃん・・・西村君」


おじさんがこちらを向いた。真っ青な顔。おばさんも真っ青で泣いている。


(そんなに悪いの!?)


私はルリが横になっているベッドに近づく。


「ルリぃ・・・」


ルリには意識が無かった。人口呼吸器をつけて、微かな呼吸音と一定に鳴る機械的な音だけが生きている証だった。


私は近くの椅子に座ってルリの手を握り締めた。握り返してくれると信じて。


「沙夜ちゃんッ!!」


おばさんが私を抱き締めてくれた。今度は筋肉も強ばらない。


「おばさんッ」

「よく聞いて、沙夜ちゃん。瑠璃ちゃんはもう二度と目を覚まさないわ」

「ッ!!」


郁人と何時の間にか来た浜田先生のの息を飲む音がリアルに聞こえた。


「その温もりも何時消えるか分からない・・・」


ルリの手を握る私の手の上に大きくて綺麗な手がそっと触れる。


「辛いわね・・・。私・・・私瑠璃ちゃんを生んで、お医者様に言われて16年・・・覚悟はしていたのよ。何時かこの日がくるって・・・」


おばさんの鼻を啜る音が聞こえた。私の両目が熱くなって、涙が零れ落ちる。


(おばさん・・・)

「でも・・・辛いわね」


苦笑いで私を見つめるおばさんと目が合う。青白い顔に充血した目だった。


「泣こう。沙夜ちゃん。辛いときはうんと泣こう。我慢はいけないわ」


おばさんの言葉に私の我慢は限界を越えていた。


「ッああああぁぁぁぁぁ!!!!」


思い切り声を上げて泣いた。おばさんは声こそ上げなかったけれど、私を抱き締めて静かに泣いていた。


「ルリぃ!!嫌ぁぁぁぁ!!」


カミサマは私の大切な人を奪った・・・。ルリが何をしたのだろうか。


ルリはただ生きたかっただけなのに・・・。