「・・・う、ん・・・」

『・・や。・・・や、さ・・・や・・・サヤ』


私は誰かに呼ばれた気がして、眠たい目を擦って上半身を起こす。


「誰・・・?」


この家に住むのは私だけだ。誰かが私を呼ぶなんてあり得ない。


そう頭の中で考えると一気に覚醒した。


(何処かで聞いたことがある声だったんだけど・・・)


枕元の時計は2時8分をさしていた。


「まだ夜じゃん」


寝る前の不安が増しているような気がする。それに加えて恐怖を感じる。夏なのに肌寒い・・・。


『サヤ』

「ッ!?誰!?」


空耳では無い。はっきりと自分を呼ぶ声が聞こえた。


部屋の隅でボゥッと白く光る物体を見つけた。


「ッ!?」


驚くけれど不思議な事に恐怖は消え去った。


『サヤ・・・』

「・・・ルリ?」


なんとなく出てきた人名。ルリという確信は無いけれど、本能がルリだと言う。


白く光る物体は私が名前を呼ぶとベッドの近くまでやってきて人の形に変わっていく。


その背丈姿は、健康体だったルリそのものだった。


「ルリ!?」

『サヤ・・・』


ルリの腕を掴んだ筈なのに、私の手はルリの腕を通り抜ける。


ベッドには触れるという事は、ルリには触れないたけだと理解した。


『サヤ・・・手紙読んでくれた?』

「読んだよ。いきなりあんな事・・・どうしたの?」

『ありがとう・・・バイバイ』


私が答えるとルリは至極嬉しそうな顔をして消えた。


「・・・ルリ?」