しばらく話をしていたら、ルリのご両親は先生の元に挨拶をしに行くと出ていき、ルリと2人きりになった。


「今日、凄く楽しかった!!」


ルリが笑顔でそう言うのだから、私も嬉しくなった。


「私も家族と過ごしていたみたいで、凄く楽しかったよ。ありがとう」


ルリの両親と過ごしたこの時間は、家族の団らんの様だった。


私はそんな存在が居なかったから余計に嬉しかった。


「そうだ。忘れてたよ。これルリに」


私が鞄から取り出してあげたのは、ビーズで作った猫のストラップ。


ルリは無類の猫好きだから、喜ぶだろうとつくってみた。


「わぁ!!ありがとう!」

「お揃い、だよ」


私は自身のケータイを手に持ってストラップをルリに見せた。


ルリの猫は明るい茶色。私の猫は黒だ。


「黒猫?」

「可愛いでしょう?」

「うん!!サヤありがとう!!!!ずうっとずうっと大好き!!」

「何をいきなり」

「言いたくなっただけ!」

「変なルリ」


いきなり大好きだなんて・・・ルリはそんな事言わない。今日はおかしな日だ。


「私からもサヤにこれ、あげる」


貰ったのは手紙だった。


「手紙?」

「うん!!読んでね?」

「ちゃんと読むよ」


私は少しだけ笑ってルリの頭を優しく撫でた。前は綺麗なハニーブラウンの髪が腰辺りまでのびていた。


しかし、薬の副作用で髪が抜け落ちてしまったのだ。ルリは凄く泣いていた記憶は目に焼き付いて離れない。


今でこそ、明るいルリだけどやっぱり辛かっただろう。


「もう、遅いし。帰るね。明日も来るから。手紙ありがとう。ちゃんと読むよ」

「うん!!また明日。バイバイ!!」


ルリの笑顔を見た、最後の瞬間だった。


私はその後の展開など予期して無かった。


今更言っても遅いけど、本当にこの時少しでも気付けたら良かったと今でも後悔している。