「可愛い・・・。食べるのが勿体ない!!」

「そう言われると、作りがいが有るわ。でも食べないと私が食べちゃうわよ」

「食べますよ!いただきます!・・・ん〜桜の香り・・・?」


口の中に入れると、クリームの程よい甘さと、春に咲く桜のほんのりとした香りが口いっぱいに広がる。


「食用花と言って、食べられる花を少しだけ入れたの」

「凄く美味しい!!」


思わず笑顔になると、おばさんも喜んだ。


「フフ。良かった」

「食用花はこんな使い方も有るのか・・・」


おじさんも驚いている。


「フフ・・・ただの飾りだけでは無いのよ。沙夜ちゃん、料理は作る方も食べる人の笑顔が嬉しくて、思わず笑顔になるの。それでまた作りたいって思うのよ」


そういうものなのかな・・・?


私は自分以外の人の為に料理した事が無いから、そういう事はよく分からない。


「沙夜ちゃんも何時か分かるようになるわよ」


私は余程難しい顔をしていたのだろうか?おばさんは私を抱き締めながらそう言う。


途端に私は体が硬直した。抱き締められるという行為も、抱き締める行為も私は慣れていない。顔が強張る。


「あ・・・ごめんなさいね。沙夜ちゃん」


慌てておばさんは私を解放してくれた。離してもらったのに筋肉の硬直はまだ直らない。


「い、いいえ・・・こういう行為に慣れてないから・・・」


安心させる様に笑う筈が、ぎこちない笑みになっている事も、私は自覚している。


(私の所為で空気悪くなっちゃったかな・・・)

「少しづつ慣れれば良いよ」


おじさんは笑って、私の頭を2、3回撫でてくれた。硬直が徐々に治る。


「すいません・・・」

「良いのよ。沙夜ちゃん」

「大丈夫。だってサヤには初めての経験だったんだよね?仕方ないよ」


ルリとおじさんのおかげで、気まずい雰囲気は無くなった。