中條優・・・
初めて会う人は皆「ゆう」と呼ぶ。


だけども違う。中條の名前は「すぐる」と読む。


字こそ女の子っぽいが、彼は正真正銘男の子だ。


なんでそんな変わった名前なのか聞くと


「両親は女が産まれると思ったらしいが、男が産まれた。女の名前しか考えて無かった両親が、読みはそのままに男っぽい字を付けた」


らしい。どんだけ適当なんだ。中條の両親よ。最初はかなり驚いた。


しかし中條は気に入っているらしく、気安く呼ばせない。


「ごめん。黒月。いやぁ郁人とのやり取りマジ受けした。久しぶりに笑ったよ」

「・・・中條」


笑いの発作は止まらなかったらしい。私が批判のつもりで、中條を見ながらいって


漸く落ち着かせる事が出来たようだ。頬は紅潮していて余程面白かったのだという事が伺える。


「いやぁ黒月と郁人。まるで親子だな」


中條は本当に仲良くなった人しか、名前を呼ばない。


一応私は一線は越えてるけど、名前は呼ばないし呼ばせないらしい。


私的にもあまり馴々しいのは好きじゃ無いから丁度良い。


「沙夜と俺が親子って勘弁してくれ・・・」

「私も願い下げ。なんで郁人なんかと」


互いに睨み合う。


「悪かったって」


そう言う中條の口元には、まだ笑みが浮かんでる。


彼がそんなに感情を剥き出しにするなんて、珍しい事だ。


私もその辺で許してやろうという気になった。