・・・そして私は、今。

帯広駅のホームにいた。

手には、『札幌行き』の片道切符。


改札に通すと、あっという間に吸い込まれて、
私は両手の荷物が狭い改札口につっかえながら、慌てて扉の向こう側に取りにでた。

そうしたら、もう。

後戻りできなくなったうえ、振り返っても、
引き止めてくれるはずの彼の姿もなかった。

ホームには、雪。

先ほどの吹雪はさらに勢いを増して、電車を待つ人々を冷たく吹き付ける。
私・・・だけじゃ、ない。

こんな日に、住み慣れた土地を離れるのは私だけじゃない。

そう、思いたかった。

札幌に「帰る」人たちではなくて、
この人達も、ひと時この帯広という土地を離れて、また戻ってくる人たち。

私も、実家に「帰る」のではなくて。

ただ、少しだけ頭を冷やしに行く、それだけのこと。